父親のこころ

子どものこころの半分はやはりお父さんです

父親になるには“自覚”と“覚悟”が必要です。

母親の気持ちをわかってあげてください。

大切にすべきことの優先順位を間違えないでください。

ホームベースが安心できる場所になるか、責任は重大です。

解説

子どもにとって母親の子宮と胸は大切ですが、やはりルーツの半分はお父さんなのです。

しかし、男性は父親になるという「自覚」と「覚悟」がなければ真の親にはなれません。母親には子宮があり、身を持って子どもを育むことができますが、男性にはそれができません。ですから、男性が自然に父親になることは難しいのです。

「自分は親になるんだ」という自覚。「ひとりの人間を作る仕事をこれからやっていくんだ」という覚悟。その父親の自覚と覚悟の元、子宮というホームベースにエネルギーが注がれ、子どもは育っていきます。でもその方向を間違ってはいけません。家族を守ることは大切ですが、決して支配してはいけないのです。これまでに私は、父親の支配で苦しむ妻や子どもたちをたくさん見てきました。妻と夫の役割は違うけれど、上下はないということを忘れないでほしいと思います。

まず、考えてほしい事は、妻の心の支えになることです。1番目と2番目の子宮をもつ母親の気持ちをどれだけわかってあげられるかが大事です。夫が妻の中の“子どものこころ”をわかってあげているかそうでないかで、子どものこころの成長に大きく差が出ます。

妊娠出産後の不安定な妻を、そういうものだと理解し、受けとめてあげてください。子どもと同じで、わかってもらえば落ち着きます。口下手な男性も「わかっていること」だけは伝えてください。そして、抱きしめて背中を撫でてあげることを、その向こうにいる子どものためにも、ぜひ妻にしてあげてください。

子育てにとって、本当に大切な時を逃してはいけません。そのために、父親としてやるべき事、大切にすべき事の優先順位を間違えないでほしいのです。

仕事と家庭、どちらが大切ですか? 自分の親と妻ではどちらを優先してあなたは守るべきですか?

今、この家庭で何が一番大切にされるべき事ですか? 収入? 子どもの問題? 妻の精神状態?

もちろん、全ての家庭で違うでしょうが、とにかく、優先順位を間違えないよう細心の注意を払いたいものです。それには子どもの一生が、そして親自身の未来がかかっています。夫婦が同じ気持ちでいられるように、ゆっくり話し合ってほしいと思います。そして、一緒に楽しめる子育てができれば、子どもの育ち方が大きく違うということは言うまでもありません。

これまでの日本社会では、男性は結婚すると「妻をホームベースにして、仕事をがんばる」ということが当たり前でした。高度成長期の男性は確かにがんばりました。その結果はどうでしょう。物は豊かになりましたが、子どものこころは育たなかったということは、現実を見ていると明らかです。その時代子どもだった人たちが本当に苦しんでいます。

その理由はこころより物を優先したからです。いい仕事をするために「妻や子どもは我慢する」というのが常であったのです。残念ですが、その風潮は今でも残っています。だから私は、特にお父さん方の意識が変わらないと、相変わらず子どもが苦しむ時代は無くならないと思っています。それほど、父親の子育てに対する責任は重大なのです。

では、お父さん自身の心や体の状態はどうでしょうか。「僕の気持ちはどうなるの」というお父さんもいるでしょう。それぞれが育った中で抱えたものもあるでしょう。

大切なことはその時、その時の“優先順位を間違えない”という事と、“人間の本当の幸せ”をお父さん自身が実感しているかどうかという事です。捨てなければ掴めないものがあるという事を、私は身を持って知らされました。

もし自信がなければ夫婦で話し合ったり、カウンセリングを受けるなど、自分の気持ちと向き合う勇気も必要なのではないでしょうか。「男は泣くな」と言われて育ったお父さん達の弱さの中に、大切なものがあるかもしれません。