子どものこころ 1

子育ての目標を間違ってはいけません

『一人で生きられる大人に育てる』それだけでいいのです。

その子の人生はその子のもの。

親が「期待」と「不安」をもって育ててはいけません。

そのままのその子を認め、愛しましょう。

解説

子育ての目標は『一人で生きることのできる大人に育てること』それだけでいいという事を、まず理解してほしいと思います。言葉で言うと簡単ですが、現代社会では達成の難しいたいへんな目標です。

“一人で生きられる大人”とは、「人に迷惑をかけずに生活ができること」と「精神的バランスを自分でとれる」という2つの事が必要だと考えます。つまり、「大人として自分の事は自分ででき、なおかつ自分を信じて生きられる」ということです。

そういう一人前の大人に育てることができれば、子育てはそれだけで大成功と言えます。子育ての目標をそれ以外に持つ必要はないのです。子どもがおかしくなったり苦しんだりする大きな原因は、親の「過剰な期待」にあるからです。そして、その期待の裏側にある、子どもを「過度に心配すること」が子どもを動けなくすることも忘れてはいけません。

「あなたの人生はあなたのもの。自分で自分の道を決めなさい」という親の思いが子どもの可能性を無限に広げます。「このままのこの子を認め、愛する」そういう親の姿勢が、人に縛られない自由なこころに育てます。子どもは親のためではなく、自分自身の幸せのために努力を重ねて育つものです。学びの段階では、できない事や失敗を受け入れてあげましょう。

自分の気持ちより、いつも“人からどう思われているか”で行動してしまう人が、いかに多いことでしょう。私自身もそうでした。

戦後の高度成長期以降に育った人は、皆、多かれ少なかれその変化の中で苦しんできたのではないでしょうか。“もっとたくさん”“もっと速く”“もっと高く”人より上に行くことが正しいと信じられた時代でした。その上、男はこうあるべき、女はこうあるべきという古い価値観も人々を根強く縛ってきました。その世代が今、そんな自分を引きずったまま親になっているのです。子ども達のようすがおかしくなるのもうなずけます。

私は“人に勝つこと”“人によく思われること”をいつも目標に生きてきたように思います。また、「やればできる」というのが私の信念でした。その結果、私は30代半ばでうつ状態になりました。息をすることも苦しくなり、これ以上生きる必要はないとまで思いました。

私は苦しんだ末、人の評価の中だけでしか生きられなかった自分に気付きました。自分の存在が人の評価の中でしか得られないなんて、こんなに不安定で辛いことはありません。私の心の中に深い寂しさがいつもあることに気付いたのです。

それは親や社会から“もっとがんばれ。今のおまえではダメだ”とずっと、無言のメッセージを受け取り、自分自身それを受け入れ、がんばった結果に他ならないのです。

バブルの崩壊や環境問題など、多くの人達がそれに気付き始めた現在ですが、自分を育てた価値観を変えることは本当に難しいことです。しかし、今、どうしても変える必要があるのだと、私はたくさんの苦しむ人々を前にして感じずにいられません。

私自身は今、「私は私でいい。人に何と思われようとダメな自分でいいんだ」といつも自分に言いきかせながら生きています。

そして、自分を認められずに苦しんで来る人達に、「あなたはあなたでいいんだよ」と何度も言ってあげます。