子どもは子宮に帰りたがるものです
子宮とは子どものホームベース。
何度も出たり帰ったりしてこころが育ちます。
人と比べず、その子の成長を気長に待ちましょう。
解説
一人で生きられる大人になるまでに、人は何度も子宮に帰りながら成長していきます。その子宮は、だんだん形を変えていきますが、母の子宮が人のホームベースの原点だと言えるのです。
最初は母親の子宮が、胎児のホームベースです。
穏やかな母親の心の状態が、安定したホームベースを作ります。子どものこころ(脳)の発達には、とても大切な時期です。
出産後は、母親の胸が第2の子宮になります。
お母さんのお腹から出たくなかった赤ちゃんは、不安で不安でしょうがないのです。体全体を被っていたものが無くなるわけですから、寂しく、危うい、不安定な状態と考えてください。だから、母親の胸がただ一つの安らげる場になるのです。また、母親の心臓の音を聞いて安心するのです。
この時期の重要性は特別です。不安で泣いている赤ちゃんにとって、放っておかれることは辛いことです。「子宮にはもう帰れないけど、お母さんはちゃんとここにいるよ。大丈夫」と赤ちゃんをたくさん抱いて、撫でてあげてください。
第3の子宮になるのが家庭です。
母親から少しずつ離れ、不安になると母の胸へ帰ってくる。それを繰り返しながら子どもは成長していきます。母の胸で十分満足すれば、次のホームベースへ移っていけます。
母の胸を卒業した子どもが帰ってくるのは3番目のホームベースである「家庭」です。子どもは、学校など、外でのストレスを抱えて帰ってきます。外で学ぶ人間関係は楽なものではないですが「一人で生きられる人になるためになんとか一人でがんばりなさい」と送り出しましょう。
そして帰ってきた子どもには“そのままのその子を受けとめてあげる”安定した家庭を用意してあげたいものです。
その後、友達や恋人など、自分で好きなホームベースを見つけ渡り歩きます。
傷つきながら、発見を繰り返して、だんだん人に頼らなくても生きられる自分になっていきます。人にかかわることと共に、一人でもいられる“孤独力”も成長への大きな条件となります。男女に関係なくとても大切な力です。
そして多くの体験を繰り返し、いつか自分自身の中にホームベースを作る時、“一人で生きられる大人”の資格が持てるようになるのです。それは、『他の誰かのホームベースになることができる』という、社会の中でもっとも大切な資格となります。社会的地位や学力などでは計れないものですが、私を含め、現在どれほどの大人がこの資格を持っているといえるでしょうか。
子育てはいつでもやり直しができると私は信じています。大なり小なり子どもに何か問題が生じても、またやり直せばいいのです。そんな時はもう一度、子宮に返すところから育て直してください。親や周りの大人の誰かから愛を感じられるようになれば、また、育ち始めます。いくつになっても間に合います。時期をはずした分、時間はかかりますが、そこからまた一歩ずつ、あせらず、子どもの成長を見守ってほしいと思います。
大人になっても、誰かに撫でられたり、ぬるめのお湯に入ったり、あたたかい布団に入ると安心するのは、今も子宮に帰りたいという思いが残っているからなのかもしれません。
育て直しをしてくれる親がいなくなった私達は、自分で自分を育てていくしかありません。ホームベースを間違えないように、大人らしい育ち方をしていきたいものです。